大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和44年(ワ)5425号 判決 1971年8月26日

原告

厨川恭子

ほか三名

被告

株式会社グリーンキヤブ

主文

被告は原告厨川恭子に対し金六二万九、三〇七円、原告厨川悦子に対し金八九万六、四九七円、原告打越敏江に対し金三四万四、二七〇円、原告細川征子に対し金四六万二、八七〇円、およびこれらに対する各昭和四四年五月三〇日以降支払い済みに至るまで年五分の割合による金員の支払いをせよ。

原告らの被告に対するその余の請求を、いずれも棄却する。

訴訟費用はこれを五分し、その四を原告らの、その余を被告の、各負担とする。

この判決第一項は、かりに執行することができる。

事実

第一、請求の趣旨

一、被告は原告厨川恭子に対し金一六〇万五、六七〇円、原告厨川悦子に対し金三五〇万三、二二〇円、原告打越敏江に対し金一五〇万四、二七〇円、原告細川征子に対し金五〇二万九、〇七〇円、およびこれらに対する各昭和四四年五月三〇日以降支払済みに至るまで年五分の割合による金員の支払いをせよ。

二、訴訟費用は被告の負担とする。

との判決および仮執行の宣言を求める。

第二、請求の趣旨に対する答弁

一、原告らの請求をいずれも棄却する。

二、訴訟費用は原告らの負担とする。

との判決を求める。

第三、請求の原因

一、(事故の発生)

原告ら四名は、次の交通事故によつてそれぞれ傷害を受けた。

(一)  発生時 昭和四三年八月一四日午後九時二〇分頃

(二)  発生地 東京都新宿区角筈三丁目二四四番地

(三)  加害車 営業用普通乗用車(練馬五く五五八一号)

運転者 訴外佐々木昇

(四)  被害車 普通乗用自動車

運転者 訴外斎藤誠

被害者 原告四名同乗中

(五)  態様 追突

(六)  被害者である原告らの傷害の部位程度は、次のとおりである。

原告厨川恭子頸椎捻挫・胸部打撲傷。原告厨川悦子頸椎捻挫・右腓腸筋部打撲傷。原告打越敏江頸椎腰椎捻挫。原告細川征子頸椎捻挫・左膝蓋部打撲擦過傷・外傷性シヨツクのため妊娠中絶

二、(責任原因)

被告は、本件加害車を所有して、これをその営むタクシー業務の用に使用し、自己のために運行の用に供していたものであるから、自賠法三条により、本件事故により生じた原告らの損害を賠償する責任がある。

三、(損害)

(一)  原告厨川恭子

1 治療関係費 金五、六七〇円

同原告が昭和四三年八月一四日より同年一〇月一三日迄の入院期間中必要とした氷代相当分。

2 逸失利益 金六〇万円

原告恭子は、本件事故当時、訴外株式会社新和プロダクシヨンに事務員として勤務し、一カ月平均金五万五、五五五円の収入を得ていたが、本件事故による傷害治療のため、昭和四三年八月一四日より同年一〇月一四日迄入院、その後昭和四四年一月二七日迄通院治療を続けざるをえなかつたのであるが、右治療によるも完治せず、胸部打撲・頸椎捻挫の後遺症状があるため、肉体的疲労の激しい前記プロダクシヨン事務に従事することができず、やむなく昭和四四年三月一八日訴外水井運送株式会社に事務員として入社したのであるが、同社においては、昭和四四年三月に給与として金一万三、〇〇〇円、同年四月および五月各金三万三、五〇〇円、同六月以降一カ月当り金三万五、〇〇〇円の収入をえたにとどまつた。次いで前同年八月一八日原告恭子は、原後法律事務所に事務員として勤務し、一カ月当り金三万五、〇〇〇円、昭和四五年一月一日以降は一カ月当り金三万八、五〇〇円の収入をうるに至つたが、依然事故前の収入に復さず、回復は昭和四六年四月一日迄には不可能と考えられる。そうすると原告恭子は、本件事故がなければ、昭和四四年二月一日以降昭和四六年三月末日迄の間に合計金一四四万四、四三〇円の収入をうべかりしところ、現実には右期間に金八六万七、五〇〇円の収入をうるにとどまり、この差額金五七万六、九三〇円を事故のため失つたことになる。このほか、原告恭子は事故後昭和四四年一月三一日迄はまつたく就労できず、その間勤務先よりなんら給与をうけられず、右五・五カ月給与相当金三〇万五、五五五円を本件事故のため喪失している。そこで原告恭子は、右損失額八八万二、四八五円のうち金六〇万円を本訴において賠償請求する。

3 慰藉料 金一〇〇万円

本件事故態様・傷害部位程度そして原告恭子が未婚の女性であること、その他本件諸事情に鑑みると、原告恭子が本件事故で蒙つた精神的損害は金一〇〇万円をもつて慰藉するのが相当である。

(二)  原告厨川悦子

1 治療関係費 金三、二二〇円

原告悦子が昭和四三年八月一四日より同年九月六日迄の入院期間中必要とした氷代相当分。

2 逸失利益 金一五〇万円

原告悦子は、久美悦子の芸名をもつテイチク専属の中堅の流行歌歌手で、本件事故当時訴外株式会社新和プロダクシヨンに所属し、同社より平均月収金二五万円をえていた。ところで同原告は、事故当時右新和プロより訴外第一共栄株式会社へ所属を変えることになつており、給与額等具体的条件について交渉中であつたところ、本件事故による頸椎捻挫、右腓腸筋部打撲の傷害のため、昭和四三年八月一四日から同年九月六日迄入院、退院後昭和四四年一月六日迄通院治療を続けざるをえなくなつたのであるが、右治療を受けても右傷害による頸椎鞭打症、右上肢打撲症の後遺症状が呈されたため、第一共栄株式会社よりの給与は、将来出演不能になる恐れもあるとの理由から月額金一〇万円という低い額で甘んじるほかなくなつたのである。右後遺症による収入減は、昭和四六年四月一日迄には回復しえないものといえるので、結局原告悦子は、昭和四三年一〇月一日より昭和四六年三月三一日迄の間、事故なくはうべかりし一カ月当り金二五万円の割合による三〇カ月分金七五〇万円の利益のうち、現実に受領しえた金三〇〇万円を控除した額金四五〇万円を本件事故のため失つているほか、事故時より昭和四三年九月三〇日迄まつたく就労できなかつたため、同年九月には前同一〇万円の給与はうけたものの、その間既に予定されていた東京都内、福島県内、北海道函館市内における出演もすべて不能となり、そのため、出演すれば第一共栄株式会社においてえられたはずの出演料合計金三五万円と、右会社が負担したキヤンセル料合計二一万円、以上総計五六万円を、原告悦子は、歌謡界の慣行により右会社に対し支払わなければならぬことになり、これも、本件事故のため原告悦子において蒙つた損害であるから、以上総計金五〇六万円をもつて原告悦子の本件事故による逸失利益とみうるが、本訴においてはこの内金一五〇万円を請求する。

3 慰藉料 金二〇〇万円

本件事故態様、傷害部位と程度、そのほか本件諸事情を勘案すると、本件事故のため原告悦子が受けた精神的損害は金二〇〇万円をもつて慰藉するのが相当である。

(三)  原告打越敏江

1 治療関係費 金四、二七〇円

原告敏江が昭和四三年八月一四日より同年一〇月一三日迄入院治療中必要とした氷代相当分。

2 慰藉料 金一五〇万円

本件事故態様、傷害部位と程度のほか、原告敏江は二児の母として、入院中家庭にある子の養育に心を砕き、大きな精神的損害を蒙つたこと、その他諸事情を綜合すると、原告敏江が本件事故のため受けた精神的損害は金一五〇万円をもつて慰藉するのが相当である。

(四)  原告細川征子

1 治療関係費 金二、八七〇円

原告征子が昭和四三年八月一四日より同年九月二四日迄の入院期間中必要とした氷代相当分。

2 交通費 金二万六、二〇〇円

原告征子の夫訴外細川聡が付添のため病院に赴くに際し必要とした交通費。

3 慰藉料 金五〇〇万円

本件事故態様、傷害部位と程度のほか、本件事故時原告征子は妊娠二カ月の身体であつたところ、事故による外傷性シヨツクのため、中絶のやむなきに至つたこと、その他本件諸事情に鑑みると、原告征子が本件事故のため蒙つた精神的損害は金五〇〇万円をもつて慰藉するのが相当である。

四、(結論)

よつて、被告に対し、原告恭子は金一六〇万五、六七〇円、原告悦子は金三五〇万三、二二〇円、原告敏江は金一五〇万四、二七〇円、原告征子は金五〇二万九、〇七〇円およびそれぞれこれらに対する本件事故日より後の日で本訴訴状が被告に送達された翌日である昭和四四年五月三〇日より支払済み迄年五分の割合による民法所定遅延損害金の各支払を求める。

第四、被告の事実主張

一、(請求の原因に対する認否)

請求の原因第一および第二項のうち、原告征子が本件事故による外傷性シヨツクのため妊娠中絶のやむなきに至つたとの主張は否認するが、その余の事実はいずれも認める。

第三項は、すべて知らない。

第四項争う。

第五、証拠関係〔略〕

理由

一、原告主張請求の原因第一および第二項の事実は、そのうち原告征子が本件事故による外傷性シヨツクのため妊娠中絶のやむなきに至つたとの点を除くと、すべて当事者間に争いなく、従つて、運行供用者であることを争わず、免責の要件をなんら主張・立証しない被告は、本件事故による原告らの各損害を、その相当の範囲で賠償しなくてはならない。

二、そこで各原告の損害につき検討する。

(一)  原告恭子

1  〔証拠略〕によると、原告恭子は、本件事故により受けた頸椎捻挫・胸部打撲傷(この点は当事者間に争いない)の治療のため、昭和四三年八月一四日より同年一〇月一三日迄入院生活を送り、その間右治療のため氷を少なくとも金五、六七〇円相当分消費せざるをえなかつたことが認められ、右認定に反する証拠なく、従つて、右氷代相当分は、原告恭子が本件事故のため蒙つた相当の範囲の損害である。

2  〔証拠略〕によると次のような事実が認められ、該認定を覆えすに足りる証拠はない。

原告恭子は、本件事故当時訴外株式会社新和プロダクシヨンに事務員として勤務し、主として妹に当る原告悦子の身辺諸雑務整理を担当し、右プロダクシヨンより年間租税を控除後の金額で、右労働に対する対価として、金六二万四、〇〇〇円を下らない給与をえていたが、本件事故による受傷のため、既に認定のとおり六二日間の入院と昭和四四年一月二七日迄一〇五日間に三一回に及ぶ通院加療を行なつた結果、医療行為は必ずしも必要ではない程度迄回復したけれども、右通院治療終了後一年間は、なお頭部、肩部および頸部に痛みが後遺し、労働に若干の障害を覚える状況であつた。そして、原告恭子は右治療終了後の昭和四四年三月一八日より、訴外永井運送株式会社に勤務するようになり、事故後始めて現実に収入をうることができるようになつたが、その給与は税控除前で一カ月当り金三万三、五〇〇円であり、その後転職したものの、そこでの給与も同様金三万八、五〇〇円どまりである。

右認定事実によると、原告恭子は、本件事故による傷害を一六七日に及ぶ入・通院加療の後、昭和四四年一月二八日に、対処的外科的な治療を終り、その後は社会生活復帰への本人の意欲と生活馴化により通常人と劣るところない労働能力回復が期待される段階に至つているものというべきであり、右回復に要する期間は認定の傷害程度、後遺症内容よりみて、一カ年間で、その間は右後遺症内容が局部に神経症状を残すものといえるので、五%の労働能力喪失が残在しているものと認められ、また、前示治療期間中、入院期間と通院実日数合計九三日は一〇〇%就労不能とみられるけれども、その余の自宅療養日七四日は、右傷害内容、治療経過、原告恭子の職務内容などよりみて、二五%は就労が可能であつたものと判断できる。そうすると原告恭子の日収一、七一〇円(円未満は五〇銭以上切上げ方式による)をもとに算出した治療期間中の休業損害金二五万三、九三五円と、そして、昭和四四年三月一八日以降の就労稼働分は、いずれも事故当時の収入額の九五%をこえるものではないから、後遺症残存期間逸失利益分の症状固定時現在価をライプニツツ方式で算出した金二万九、七〇二円の合計額二八万三、六三七円が原告恭子の逸失利益となる。

3  前示諸事情、とくに事故態様、傷害部位とその程度、後遺症状などを総合評定すると、原告恭子が本件事故により蒙つた精神的損害は金三四万円をもつて慰藉するのが相当である。

(二)  原告悦子

1  〔証拠略〕によると、原告悦子は本件事故により受けた頸椎捻挫・右腓腸筋部打撲傷(この点は当事者間に争ない)治療のため、昭和四三年八月一五日より同年九月六日迄入院して治療を受け、その間治療のため氷を少なくとも金三、二二〇円相当分を消費せざるをえなかつたことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はないので、右氷代相当分は原告悦子が本件事故のため蒙つた相当の範囲の損害である。

2  〔証拠略〕によると次のような事実が認められ、該認定を覆えすに足りる証拠はない。

原告悦子は、事故当時久美悦子の芸名をもつて、流行歌歌手としてはほぼ中堅の地位を占めている者であり、所属する訴外株式会社新和プロダクシヨンより、租税控除後の金額として一か月少なくとも金二三万八、〇〇〇円の給与をえていたところ、事故前の昭和四三年六月頃右新和プロの代表者が病に罹つたため、その所属を訴外第一共栄株式会社に移す交渉が進捗し、事故前既に移籍交渉は実質的には、固定給月当り金一〇万円に加えて出演に応じ歩合給を支給するという、原告の当時のレコード発売状況、出演数よりみれば、実質収入は新和プロにおける時より下がることはないと予測しうる条件で、妥結していたのであるが、本件事故のため、既に認定のとおり二三日間の入院を余儀なくされ、その後昭和四三年九月七日より昭和四四年一月六日迄は一八回の、昭和四四年六月三〇日より同年九月二四日迄は三八回に亘る、いずれも稼働の間になした通院治療によりようやく医師による治療を終了するに至つたが、とくに右一月六日迄の治療は、症状がいまだ固定しない時期で、コルセツトを常に着用する日が多かつたような状態で、予期した程の出演ができず、結局事故後昭和四四年九月一日より支給された給与額は昭和四五年一二月末日迄では年間租税控除後で金一〇九万九、八三〇円、以後もその五〇%増程度にとどまつた。そして原告悦子は右のとおり昭和四四年一月六日迄はコルセツトを着用の必要がかなりあり、症状の悪化が心配されたのであるが、昭和四四年一月七日以降は頭部・肩部・頸部に痛みが残つたものの、同年六月よりの通院治療なども効あり、昭和四五年一月六日頃迄に右症状も主観的にはともかく、客観的には消滅するに至つている。

右認定事実によると、原告悦子は本件事故により受けた傷害の治療のため、入院期間と症状に対する悪化のおそれがなくなる昭和四四年一月六日迄は、入院と通院実日数分は一〇〇%の、その余の自宅療養日も少なくとも七五%相当時間は休業するのが相当であり、症状固定時とみられる昭和四四年一月七日より一年間は局部に神経症状が残り、労働に支障があつてその能力を五%は低下させる状態が後遺すると判断できる。ところが、右認定のとおり、昭和四三年九月一日以降は、原告において自陳するところでもあるように、原告悦子の一日当りのうべきものと見込まれる租税控除後の収入金六、四六〇円の二五%相当分をこえる金三〇一四円の金員を、原告悦子は第一共栄より、治療期間中の稼働分として受領しているので、結局昭和四三年八月中の一七日分は一日当り金六、四六〇円の、その後昭和四四年一月六日迄一二八日分は一日当り金六、四六〇円より金三、〇一三円を控除した金三、四四七円の、各割合で算出した合計額金五五万一、〇三六円とその後の後遺症残存期間は原告悦子において見込収益の九五%相当分をこえる受領はないからこの逸失利益の症状固定時現在価をライプニツツ方式で算出した金一一万二、二四一円の総計金六六万三、二七七円が、原告悦子の逸失利益となるのである。

なお、原告悦子は、入院およびその直後の治療期間中の出演不能による出演料の損失とキヤンセル料負担を、自己の損失と主張し、〔証拠略〕には右主張に添う部分があるが、右は証人磯貝朝弘の証言と対比すると、事実を正確に把握してのものとはいえず、その他右主張を認めるに足る証拠はないので、右主張を容れることはできない。また原告は昭和四三年九月三〇日迄の損害としては、出演不能による右損失を損害と構成するのであるが、これは、受傷による就労不能による損失という点で、前示認定と主要事実面で齟齬するものでなく、従つて原告らの右主張に対し、前認定のとおり休業損害を認容しても弁論主義になんら反するものでない。

3  前示諸事情とくに事故態様、傷害部位とその程度、後遺症状などを総合評定すると、原告悦子が本件事故により蒙つた精神的損害は金二三万円をもつて慰藉するのが相当である。

(三)  原告敏江

〔証拠略〕によると、原告敏江は本件事故による頸椎腰椎捻挫の傷害(この点は当事者間に争いない)の治療のため、昭和四三年八月一四日より同年一〇月一四日迄入院し、その間治療のため少なくとも金四、二七〇円相当分の氷を消費せざるをえなかつたことが認められ、右認定に反する証拠はなく、よつて右金員は原告敏江が本件事故のため蒙つた相当の範囲であり、また右事実のほか、本件事故態様、傷害の程度その他本件諸事情によると、原告敏江が本件事故で受けた精神的損害は、金三四万円をもつて慰藉するのが相当と評定できる。

(四)  原告征子

〔証拠略〕によると、原告征子は本件事故により頸椎捻挫、左膝蓋部打撲擦過傷の傷害を受けた(この点は当事者間に争いない)ほか、事故時妊娠二カ月の身体であつたところ、事故による右外傷のため発熱と精神的打撃で出産による母体への悪影響が考えられたため、万全を期し、中絶の措置がとられていること、原告征子は本件事故による傷害治療のため昭和四三年八月一四日より同年九月二四日迄入院生活を送りその間治療のため少なくとも金二、八七〇円相当の氷を消費せざるをえなかつたことが認められ、右認定を覆えすに足りる証拠はなく、そうすると、本件事故が原告征子の妊娠中絶の一因となつていることは肯定でき、かつ、その因果関係は、右認定によれば相当性をもちうると判断できるので、右事実を慰藉料算定の一事由とすることとし、その他本件事故態様、右各認定事実を総合すると、原告征子が本件事故により蒙つた精神的損害は金四六万円をもつて慰藉するのが相当とみられ、また氷代相当金二、八七〇円も本件事故と相当因果関係ある損害とみられるが、しかし、前認定の原告征子の受傷状況治療経過よりみて、また本件全証拠によるも付添が必要不可欠とみうるに足る証拠はないことよりして、家族の病院迄への現実出頭が本件事故による傷害の場合相当の必要性を有していたとは認められないので、交通費の損害請求は理由がない。従つて原告征子の賠償を求めうる金額は四六万二、八七〇円である。

三、以上のとおりであり、被告は、原告らが本訴で請求する認定の損害賠償債権についてこれを消滅乃至減額させる事実をなんら主張立証しないので、原告恭子は金六二万九、三〇七円、原告悦子は金八九万六、四九七円、原告敏江は金三四万四、二七〇円、原告征子は金四六万二、八七〇円、およびこれらに対する本件事故日より後の日で一件記録上本訴訴状が被告に送達された翌日であること明らかな昭和四四年五月三〇日より支払済み迄各年五分の割合による民法所定遅延損害金の支払を、それぞれ被告に対し求めうる。

原告らの本訴請求は右限度で理由があり正当であるから、これらを認容し、その余は理由なく失当であるから、これをいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担について民訴法八九条、九二条、九三条一項、仮執行の宣言について同法一九六条を各適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 谷川克)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例